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青森地方裁判所弘前支部 昭和35年(ヨ)47号 判決

申請人 弘南バス株式会社

被申請人 弘南バス労働組合

主文

別紙物件目録記載の自動車に対する被申請人組合の各占有を解いて、申請人会社の委任した青森地方裁判所執行吏に、その保管を命ずる。

右執行吏は、申請人会社の申出があるときは、申請人会社に、その保管にかかる前項記載の、自動車の使用を許すことができる。

被申請人組合は、所属組合員及び第三者をして、申請人が営む一般乗合旅客自動車運送事業、一般貸切旅客自動車運送事業、その他の付随業務を、実力をもつて妨害してはならない。

第一項記載の執行吏は、本命令の趣旨を公示するため、及び右命令に違反する防害行為を除去するため、適当な方法をとることができる。

申請費用は、被申請人組合の負担とする。

(注、無保証)

事実

第一、当事者の求める裁判

申請人(以下会社という。)は、

被申請人(以下組合という。)は、別紙目録及び図面(第一乃至第三)記載の土地建物及び自動車に対する各占有を解き、これを会社の委任する執行吏の保管に移さなければならない。

会社の委任する執行吏は、会社の請求があるときは、その保管にかかる前項記載の各物件の使用を許さなければならない。

組合は、その組合員及び第三者をして会社がなす一般乗合旅客自動車運送事業、一般貸切旅客自動車運送事業その他の付随業務を実力をもつて妨害してはならない。

会社の委任する執行吏は、本命令の趣旨を公示するため及び本命令に違反する妨害行為を除去するため、適当な方法をとることができる。

との裁判を求め、

組合は、「本件申請を却下する。」との裁判を求めた。

第二、会社の主張の要旨

一、(会社の組織、事業内容)

会社は昭和十六年四月十七日設立され、道路運送法に基き申請の趣旨第三項記載の事業を営む資本金一億円の株式会社であり、現在従業員数は千四名、保有車輛数二百六十一台であるが、その配置は次のとおりである。

(イ)  本社及び重整備工場(前記肩書地)

一三四名

(ロ)  弘前営業所((イ)と同じ)

三八六名 一〇六台

(ハ)  五所川原営業所(五所川原市大字大町所在)

二二〇名 七一台

(ニ)  黒石営業所(黒石市大字株梗ノ木所在)

一一三名 三四台

(ホ)  板柳営業所(北津軽郡板柳町大字福野田所在)

四三名 一四台

(ヘ)  鰺ケ沢営業所(西津軽郡鰺ケ沢町本町所在)

四四名 一五台

(ト)  青森営業所(青森市大字造道字沢田所在)

六四名 二一台

なお定期バスの運行路線は、弘前市五所川原市黒石市及び青森市を中心として、青森県下の南北中西の四津軽郡及び一部秋田県にまたがり、一日の平均乗客数は約五万人に及ぶ。右地域においては一部に国鉄及び他会社経営のバスの便があるのみで、会社は同地域における旅客運送を殆ど独占的に営み、従つて寸時といえどもその運行停止または遅延等ダイヤの乱れを起せば、右利用者に極めて大なる不便と苦痛を与えることとなり、公益事業としての使命を果すことができない。

二、(組合の概要)

組合は会社の従業員を構成員とし、上部団体としては私鉄総連に加盟し、本社及び各営業所に各支部(但し弘前営業所には弘前支部と車掌支部とがある。)を有している。

三、(団体交渉の経過)

(イ)  組合は会社に対し昭和三十五年一月八日現行労働協約の改訂要求書を提出し、次いで同月十三日一人当り平均千四百三十円の賃上げ及び賃金体系の根本的改訂を内容とする要求書を提出して団交を求めてきた。

右要求の内容については過去五年間における従業員一人当りの生産性が約二割も低下し、昭和三十四年春の賃上げの結果期末には過去の車輛償却不足額金六千五百万円に加えて約千五百万円の赤字が予想され、今回の賃上げを実施すれば、昭和三十五年度も約二千万円の赤字となることが明らかである。会社の賃金水準は東北地方同業他会社の平均水準をはるかに上廻わつているが、公益事業の使命にかんがみ平和裡に処理するため、同年三月三日最終案として金四百八十円の保険料は本人負担とすることその他協約上組合が当然履行すべき事項を内容とする確認的要求を付帯条件として今次の賃上げ案を容認した。

(ロ)  しかるに組合は、それより前から、右賃金値上げの要求に協約改訂の要求をからませ、同年二月中旬までに協約改訂が妥結しないときは、同月二十一日以降実力行使にでる態勢をとることを表明し、二十二日以降争議行為に訴えることを会社に通告してきた。

しかし、現行協約は、その第八十三条において有効期間を昭和三十五年六月七日までとし、期間満了後は一年に限り有効とする、但し期間内でも両者の合意により変更することができるとしているが、これは右規定の成立経過よりみて、労使の一致した意思として一方が改訂に応じない場合は、三年間有効とする趣旨である。

(ハ)  次に本件争議に関する労働関係調整法第三十七条の予告については、組合は、賃上げにつき同年二月十九日付をもつて、同月二十一日午前零時以降、協約改訂につき同年三月二十四日付をもつて翌二十五日以降、それぞれ争議に入る旨官報に掲載されたのにかかわらず、組合は、三月七日以降現在まで、あらゆる職場において、指名ストを反覆実施し、右ストについては協約改訂の要求をも目的とする旨書面で会社に回答し、佐藤委員長は二月末の会社々長との面談の際には、会社が、組合の協約改訂案をのむならば賃上げ要求は敢えて固執しないとの趣旨の発言をし、組合の争議は既にその目的及び開始時期において違法な要素を含んでいるものである。

四、(争議行為の実態)

(イ)  組合は三月七日以降各営業所において運転系統部門以外の整備計算資材部門を対象として断続散発的に、また五月四日以降は運転部門についても無警告かつ突然の指名ストを反覆して実施し、その延人員数は千百四十五名に達している。これに対し会社はやむをえざる措置として指定ロツクアウトをもつて対抗した。

(ロ)  四月十九日付の組合機関誌「情報」によれば、五月六日以降期日を予定して部分スト、四十八時間スト、七十二時間ストを実施する旨決定しながら、右日程を無視して全く無警告散発的に指定ストを実施し、このような状態は次第に激化し代替勤務を命ずる等会社の万全の措置も到底ダイヤの混乱を免れしめなかつた。

(ハ)  会社は五月五日組合が青森板柳黒石の三営業所において翌六日午前零時を期して全面ストに突入するとの情報を聞知し、客観的にもこれが認められたので、五日午後十時頃から右各営業所所属車輛を分散管理しようとしたが、同所に予め待機していた組合員の暴力傷害行為等の実力によつて阻止され、その目的を達しえなかつた。しかも一旦会社の占有管理下においた車輛も組合の実力によつて奪取され、別紙目録記載のとおり各車輛は右実力によつて車庫その他の構内に罐詰にされ、文書でその返還を求めたが組合は何らの回答もせず今日に及んでいる。

しかして組合は板柳営業所においては、構内に杭を打ち繩張をし、黒石においては車輛を接着させて組合員がその周囲にすわり込み、青森においては門扉を閉じる等の方法によつて、通常の運転方法では到底車輛を移動し難い状態におき、更に車庫内等に待機して、車輛をその手中に継続して保管占有している。

(ニ)  組合は五月七日以降は右営業所以外の路線においても指名ストをし、甚だしきは旅客を乗せて運行中の車輛を、その運転手を脅迫し暴力を加えて、当該車輛所属の営業所以外の場所にこれを運行して不法に管理している。

五、組合の争議行為の違法性について

組合の本件争議行為は、次の理由により違法であり、その手段方法においても正当な争議行為の範囲を逸脱した違法なものである。

(イ)  信義則違反について

会社は昭和三十四年春組合の極めて高額な賃上げ要求につき、経理内容から本来は容認しえないものであつたが、公益事業の使命達成と事態拾収の見地から、青森県地方労働委員会の職権斡旋を受け入れたが、その際妥結協定書(疎甲第四号証の三)及び細目協定書(同号証の四)記載のとおり確約した。すなわち、労使の問題を解決する手段として争議行為にでることは極力避け、少くとも昭和三十五年三月末までは争議行為をしないことを確約したのである。しかるに組合は前記のとおり三月七日以降ストに突入しているが、これは右協定確約の精神を無視し、労使間の信義則に違反した違法な争議行為というべきである。

(ロ)  平和義務違反について

前述のように協約第八十三条は本来三年間の有効期間を定めたものであるが、これは協定の際三年の有効期間中でも両者の合意により変更しうることとしたもので、その点は文理解釈上からも当然そうあるべきである。もとより会社は昭和三十四年十二月十五日の労使協議会において協約改訂の合意をしたことはなく、単に組合の要求に対し極力問題の解決に努力することを約したにすぎない。

仮りに組合主張のように現行労働協約が昭和三十五年六月七日をもつて期間満了により失効すると考えても、満了後の新協約については満了の際受諾するか否かを決すれば足り、有効期間中争議行為にでることは、産業平和を保障せんとする協約の精神に反し、平和義務を認めた趣旨を没却した違法なもので許されるべきではない。

(ハ)  労働関係調整法第三十七条違反について

既述のとおり組合は同条に違反して争議行為を開始続行しているが、右違反について仮りに労働省にておちがあつたとしても、それは右争議行為開始当時組合が既に平和義務違反の争議を企て私鉄総連のスケジユールに従つて強引にその目的を貫徹しようとしたことに起因しているもので、しかも組合がした「各職場の全体にわたり、あらゆる形の争議行為」というような一般的抽象的な表現は同条の精神に反し殆ど予告の意味をなさないものである。これに反し会社のしたロツクアウトは、組合の争議予告によつて公衆の受ける損害についての範囲が明らかにされているので、その範囲内でしたものであるから、独立して予告する必要は全くないというべきである。

(ニ)  争議行為の手段方法の違法性について

組合は前記当初の指名ストについて同年五月十四日以降全面的に四十八時間ストをおこない、支援団体をも動員して各営業所をピケ隊で包囲し、組合の占拠を免れて業務稼動中の車輛を次々に組合員の実力により奪取してその移動搬出が不可能なように車庫内にギツシリ詰めこみ、ワイヤーで固定したりタイヤの空気を抜いたり更に車輛内等に宿泊待機して車輛の占有の回復を妨害している。このため会社従業員は所長等が事務所に出入するほかは車庫内に出入することは勿論、車輛に近ずくこともできない状態にある。

第三、仮処分の必要性

会社はその公益事業の使命遂行上、本件の事態は一日といえども放置できないものであり、組合員六百二十一名に対し第二組合(弘南バス全労働組合)員二百八十名その他非組合員百四名及び臨時従業員約四百名をもつて右業務を確保しようとしているが、組合の前記行為によつて阻害され、公衆に与える支障はまことに多大である。

よつて会社は組合に対し妨害排除請求の本案訴訟を提起すべく準備中であるが、本案判決をまつていては会社の業務遂行上回復し難い損害を蒙むるので、申請の趣旨記載のとおりの仮処分命令を求めるものである。

第四、組合の主張の要旨

一、(答弁)

第二の一(会社の組織事業内容)は認める。第一の三のうち組合が団体交渉の申入をしたこと、昭和三十四年四月に青森県地方労働委員会が職権斡旋したこと、組合が同三十五年四月同委員会に斡旋申請をしたことは認める。第一の四のうち組合が三月七日以降整備工等の指名ストをしたこと、これに対し会社が指名ロツクアウトをしたこと、指名ストの日時及び会社が代替乗務を命じていること、会社主張の情報に会社主張のとおりの記載があること、会社が五月五日午後十時頃から車輛の持ち出しをはかつたこと、組合が過去において争議戦術として指名ストを採用したこと、組合の争議に関する通告の点、及び会社が車輛の返還を求めたこと、五月七日以降三営業所のバスが運行を停止し、組合が同日以降右三営業所以外の路線においても指名ストをしていることを認める。その余の事実は否認する。

仮処分の必要性の主張はすべて争う。

二、(組合の主張)

(イ)  組合は本件車輛につき排他的占有をしていない。

車輛は会社の整備保全施設である各営業所の構内においてあるのみであり、同所にはいずれも事務室があり、所長等が現に執務し、かつ本社とも容易に連絡しうる状態にあつて、また電話等で密接に連絡を保持して主観的に車輛を支配している。すなわち青森営業所においては、会社の守衛が常時施設の保全管理に当つており唯一人の職制である所長はいつでも構内で執務できる状態にあり、黒石では所長始め職制が、毎日事務を執つており、全施設を一体として管理支配し、板柳においては右と同様であつて、客観的にも右施設内に存する車輛は会社が支配していると目される状態にある。

更に各車輛のエンジンキー、自動車検査証も会社が保管管理している。すなわち組合員は営業所内に待機しているが、右(イ)のとおりの状況の下に従属的に車輛を占有しているにすぎないものであり、ただその占有は正当な争議行為としての怠業乃至ピケツティングによるものである。

(ロ)  本件争議について予告手続違反の瑕疵はない。組合は協約改訂斗争について昭和三十五年二月十一日法定の争議予告通知を履践した。もつとも、中央労働委員会への手続は問題なく受理されたが、青森県労政課は同日右通知を受理した旨の電話連絡をしながら、約一週間後同通知第七項の記載中「合意に至らなかつた」旨の記載は違法だから予告通知を取消して欲しいと申し入れてきた。そこで組合は文書でその旨指摘するよう通告し、右通知は受理されたとの見解に立つていたところ、私鉄総連からの連絡もあつたので、同月二十二日一部訂正する旨の文書を送付した。しかるにその後労政課から一部訂正でなく再提出して欲しいと申し入れてきたが、結局受理の日を遡及することを了承したので三月十二日に同月十一日付で予告通知を出したところ、労働省は遡及して受理することはできないとしつつ、勝手に同月十四日付で受理した旨を公表してしまつた。従つて二月二十一日付の予告通知が不適法だとしても、三月十二日付で確実に通知しているのであるから、同月二十一日より適法にストを開始しうるものである。

(ハ)  協約第八十三条の解釈について、同条中「期間満了後一カ年を限り有効とする。」との条項はその前項とは独立のものである。従つて右条項には法の一般解釈上「当事者の合意ある場合」との隠れたる限定条項があるものと解すべきである。しかして但書の条項は前項の直接の但書であり、昭和三十五年六月七日までの有効期間内でも合意により変更しうるとの趣旨と解するのが正当である。なお右協約の改訂に同意したことからも、会社の主張は理解に苦しむところである。

(ニ) 組合に平和義務違反の事実はない。

協約の有効期間中でも、その満了後の労働条件について実力でその変更を要求しうることは当然であり、多数学説の示すところである。

(ホ) 信義則違反の主張は否認する。

第五、疎明関係〈省略〉

理由

(当事者間に争いのない事実)

一、会社は肩書地に本社をおき、一般乗合等の旅客自動車運送事業を営む株式会社で、現在従業員数は約千余名名、保有車輛数二百六十一台を有し、重整備工場のほかに弘前、五所川原、黒石、板柳、鰺ケ沢及び青森に各営業所を設け、それぞれ会社主張のとおりの従業員及び車輛を配置していること、会社の定期バスの運行路線は、弘前市、五所川原市、黒石市及び青森市を中心として南、北、中、西の四津軽郡及び一部秋田県にまたがり、一日平均の乗客数は約五万名に及び、該地域における旅客運送を殆ど独占的に営んでいること、会社のバスが運行を停止遅延する等ダイヤを乱せば多数の利用者に多大の不便と苦痛を与えること、組合が昭和三十五年三月七日以降整備工等の指名ストを実施し、同年五月四日以降運転部門について指名ストを実施し、同月七日以降青森、黒石、板柳の三営業所のバスが運行を停止し、かつ、右営業所以外の路線においても、指名ストを実施していること。

(被申請人が明らかに争わず自白したとみなす事実)

組合は会社従業員を構成員として成立し、私鉄総連に加盟しており、会社主張のとおりの支部を有していること、主文第三項掲記の土地建物及び同第三項掲記の車輛(自動車)が会社の所有(但し、青森営業所の土地は、会社が他から賃借していること)に属すること、竝びに右車輛が、会社主張の各営業所の構内に現に存すること。

(占有関係について)

疎明によれば、

組合の賃金値上げ等に関する要求貫徹のため、昭和三十五年三月三日から争議に入り、(同日以降争議に入つたことは、組合の自陳するところである。)現在、会社所有の前記土地建物(土地は一部賃借していること前示のとおり。)内に存する会社所有車輛の構外移動を拒否し、あるいは、その運行を阻止するため、同年五月六日以降青森、黒石、板柳の三営業所において、組合員が右各営業所に滞留し、いわゆる職場占拠の方法による争議手段にでたこと、その前日の五日午後十時過頃会社が右各営業所所属車輛を分散して管理し平常運転を強行すべく企図し、分散管理のため同営業所に赴いた際、支援団体員を含む組合員は、会社の意思を無視しこれに敵対して、実力をもつてその分散管理を阻止し、更に進行中の車輛を停車させて、右車輛をその実力支配下におき、その後各車輛をワイヤー等で連絡し又は車輪の空気を抜き等して会社の車輛分散行為を困難にさせたこと、組合が営業所ごとに張つているピケツトは、主として会社側の入所を阻止し、組合が手中に収めた車輛を確保するにあること、会社がこれら車輛の返還を求めても組合は返還しないこと、同月七、八日頃に亘り会社従業員が現に乗客を乗せ、または空車で業務上運行中、実力でこれを阻止し、あるいは組合員が滞留する営業所に運行留置して運転休止等の実力行為にでたことが認められる。

由来労働組合は、労働者が主体となつて自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上をはかることを主たる目的として組織される団体であり、同組合がその目的遂行の一手段として使用者と対等の立場にたつて使用者と労働者との関係を規制する労働協約の締結又は賃金の値上げその他労働者の利益擁護のため、団体交渉をもち、なお不十分のときは実力の行使として、いわゆる労働争議にもちこみ、目的の貫徹に邁進すること、かかる場合、労働組合の争議権として、同盟罷業怠業又はピケツテイング等一連の実力行使は、是認されるところであるが、飜つて本件の組合のなした前記所為を看ると、いずれも労働争議行為として許容される範囲を逸脱した暴力の行使というべく、しかしてかかる争議の場合においても、なお、暴力の行使が労働組合の正当な行為といえないことは、敢えて論をまたざるところである。されば、仮りに、組合の争議の目的が正当であつたとしても、これをしも正当として認容することはできない。

前説示の事情によれば、会社が前記車輛の所有者であることが当事者間に争いのない本件においては、会社は右本権に基いて組合の前記妨害行為の排除を求める本案請求権を有するというべきである。

(仮処分の必要性)

疎明によれば、会社は、右土地建物及び車輛を組合の前記行為により、業務遂行上占有乃至運行の用に供しえないため、運送料金収入の機会喪失による損害を受けているほか、車輛の毀損等有形無形の相当の損害を受けているが、特に車輛の不法な占拠により、その管理運行がこれ以上渋滞するときは、ひとり会社の盛衰のみならず、これを利用する津軽一円の沿線住民の日々の生活に重大な支障を生ずることは、会社のバス事業が、公益事業であること、該事業が殆ど独占的であることに思ひおよぶとき、更にその被害の絶大にして、はかり知るべからざるものがあると認められるが、その余の分については、いま俄かに仮処分の必要は認められない。

(結論)

よつて組合に対し、主文各項記載の措置を命じ、申請費用については、民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 飯島直一 村上守次 中橋正夫)

(別紙省略)

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